バックラッシとは
歯車においてバックラッシとは一対の歯車が互いにかみ合って運動している際、運動方向に意図して設けられた隙間(あそび)のことです。
バックラッシの必要性
歯車を無理なく滑らかに回転させてあげるには歯と歯の間に多少の隙間が必要です。この隙間がなければ歯車同士が干渉してしまい回すことができません。 また、その他にも下記理由があります。
- 熱膨張(使用時に歯車が熱を持ち膨張するため)
- 油膜形成(油が入る隙間を与えてあげる)
- 負荷時のたわみを吸収してあげる。
- シャフト(軸)のフレを吸収してあげる。
- 歯車の精度誤差を吸収してあげる。
バックラッシの量
バックラッシは歯車の運動精度に大きな影響を与えます。バックラッシの量が大きすぎると騒音の原因になってしまいますし、小さすぎると歯車の摩耗やトルクの減少など様々な問題が起こってきます。
バックラッシの選定のポイント
歯車のバックラッシを選定するには、以下の要素を考慮する必要があります。
- 必要なトルクまたは回転力。歯車のトルクまたは回転力に応じて、適切なバックラッシを選定する必要があります。トルクが大きい場合はバックラッシを小さくする必要があります。
- 歯車のサイズ。歯車のサイズや歯車の歯数によって、適切なバックラッシが異なります。一般的に大きな歯車は大きなバックラッシを持つ傾向があります。
- 必要な精度。歯車の回転精度が高いほど、バックラッシを小さくする必要があります。
- 必要な速度。歯車が高速で回転する場合はバックラッシを小さくする必要があります。高速回転の場合、バックラッシが大きいと歯車の振動や騒音の問題が発生する可能性があります。
バックラッシの規格
歯車のバックラッシについてはJIS規格もあります。 下記、JIS規格に定められています。 ・平歯車及びはすば歯車のバックラッシ(廃止規格:JIS B 1703) ・かさ歯車のバックラッシ(JIS B 1705) しかし、JIS規格はあくまでも一般的な基準であり、特定の用途に応じて異なるバックラッシが必要な場合もあります。そのため実際の使用条件に合わせた適切なバックラッシを選定する必要があります。
円周方向バックラッシとは
相手歯車を固定し、一方の歯車をかみ合い歯面から反かみ合い歯面が接触するまで回転できるピッチ円上の弧の長さのこと。 測定方法はダイヤルゲージを用いて測定子を大歯車の歯面の外端部に歯面とほぼ直角に当て、小歯車が回転しないように固定して大歯車を正逆に回転させてダイヤルゲージの振れ幅を読み取る。大歯車の円周上でほぼ等間隔に3か所以上で測定を行い、すべての測定値が許容値内でなければいけない。 (図1を参照)
法線方向バックラッシとは
一対の歯車のかみ合い歯面を接触させている場合の反かみ合い歯面間の最短距離。歯直角方向のバックラッシのこと。 測定方法は両歯面間の隙間を鉛版またはすきまゲージを用いて測定を行う。 (図1を参照)
角度バックラッシとは
相手歯車が所定の位置で固定されたとき、一つの歯車が動くことのできる角度の最大値のこと。
半径方向のあそびとは
かみ合い側歯面と反かみ合い側歯面が接触するようにしたときの所定の中心距離からの減少量(移動量)のこと。
軸方向のあそびとは
かさ歯車のかみ合い側歯面と反かみ合い側歯面が接触するようにしたときの所定の組み立て距離からの減少量(移動量)のこと。 組付け時に組立基準面と歯車端面との間にシムを挟んでバックラッシ調整を行うこともある。